聖マリ神奈川県地域枠 金沢医科大学140点の面接

聖マリアンナ医科大学の学校推薦型選抜には、一般公募制と神奈川県地域枠特別推薦という二つの方式がある。
試験日は例年11月中旬、合格発表は12月上旬で、おおむね毎年ほぼ同じ時期に行われている。

出願資格に求められる評定平均は3.8以上と、医学部としては比較的緩やかである。ただし、数学・理科・外国語の3教科については4.0以上が求められているので注意が必要だ。

募集人員は、一般公募制が20名程度であるのに対し、神奈川県地域枠特別推薦は7名。成績条件を満たしていて神奈川県在住であれば、検討の余地はあるだろう。

倍率について見ると、一般公募推薦は2022年度に5.9倍と高かったが、翌年の2023年度には2.2倍に下がり、2024年度はやや上昇して2.5倍となった。地域枠推薦の倍率はさらに低く、2023年度が1.2倍、2024年度が1.6倍となっている。現時点で2025年度の動向は不明だが、過去のデータを見るかぎ理、比較的穏やかな競争率であることがうかがえる。

試験内容は、基礎学力試験、小論文、面接の3つから構成されている。

基礎学力試験は、数学と理科が各100点の計200点で、試験時間は90分。数学は記述式で、数I・II・A・B(確率分布と統計的推測を除く)から出題される。理科は物理・化学・生物の3分野から2分野を選択。いずれも基礎分野からの出題が中心である。なお、物理では「電子と光」「原子と原子核」、化学では「有機・高分子化合物」、生物では「生態系」や「進化」の分野は対象外となっている。

もう一つの基礎学力試験は英語。
時間60分で配点は150点だ。

小論文は60分で50点。課題文型で、国語の問題に近い形式となっている。課題文の中から2つの下線部に関する説明問題が出題され、最後に400字で自分の意見を述べる記述が課される。過去には「AIと医療従事者の関係」や「障害者差別」などが出題されており、テーマは医療に限定されず、広く社会問題からも選ばれており、読解力、論理的な構成力、簡潔な表現力などが問われる。

面接は2回実施される。
いずれも3名の面接官によって行われ、15分前後、配点は50点ずつ。
特徴的なのは、1回目の面接では調査書や志望理由書などの出願書類をもとに質問が行われ、2回目の面接では、面接官は受験生に関する情報を一切持たない状態で面接に臨む点にある。それぞれが異なる角度から人物を評価する設計であり、一つの話題を深く掘り下げられる場面もある。なお、どちらの面接にも必ず1名は女性の面接官が参加するようだ。

総じて、求められる学力は高すぎるものではないが、評価の軸は明確に定められている。
特に、人物評価に関しては二重構造の面接によって丁寧に行われており、単なる筆記試験の出来不出来だけでは測れない要素を重視している印象がある。

神奈川県在住で医学部を目指し、そして一定の評定を満たしていれば、選択肢の一つとして考えてもよい推薦入試制度ではないだろうか。

面接配点が140点

さて、医学部の推薦入試といえば、金沢医科大学の総合型選抜がユニークに感じる。
面接に140点という高い配点が割り当てられているのだ。

第1次選抜では基礎学力テストが実施され、英語60点、数学60点、理科80点(理科は物理・化学・生物のうち2科目を選択)で構成される。試験時間は80分で、すべての教科の問題が一括して配布され、教科ごとに時間が区切られていないため、時間配分には注意が必要である。これに加えて、自己推薦書を60分で作成するが、この段階では採点対象とはならず、第2次選抜で評価される。

第2次選抜の中心となるのが個人面接であり、所要時間は15分程度ながら、配点は140点と極めて高い。さらに、自己推薦書を含む出願書類の審査が60点分加わる。

注目すべきは、面接試験の比重の重さである。15分で140点分の評価を行うには、「志望理由」や「自己アピール」といった形式的な質疑応答だけでは評価の差がつきにくい。したがって、受験生ごとに思考力や価値観を試す問いが一つか二つ提示される可能性が高いと考えられる。

では、どのような問いが質問されるのか。

同大学の過去の出題傾向を整理すると、主なテーマは「医療」と「社会」に大別される。医療分野では、終末期医療、救急体制、感染症、癌の告知、医療倫理といった直接的な課題が扱われるほか、医療制度や高齢者医療、救急車の適正利用といった社会的背景も取り上げられている。

一方、社会に関する出題はより幅広く、情報社会、ボランティア、企業不祥事、科学技術(AI、ゲノム編集、iPS細胞)といった時事的なものから、謝罪や敬語、手紙文化といったコミュニケーションの問題、日本人の国民性、環境問題、教育政策まで多岐にわたる。これらのテーマは、単に医療とは無関係のものではなく、社会の在り方や倫理、文化の変化が医療の現場や制度にどう関わるかを考えさせるように設計されている。

このような出題傾向から読み取れるのは、出題者が知識量ではなく、受験生が物事をどれだけ主体的に捉え、独自の視点で社会や医療の問題に向き合っているかを見極めようとしている点である。

たとえば、「安心して救急車を使える社会」という問いに答えるには、医療制度だけでなく、経済格差、地域社会の連携、人々の価値観といった複数の視点から思考する力が必要である。強毒HIV株と弱毒HIV株の問題を考える場合も、単なるウイルス学的知識だけでは不十分であり、感染拡大の背景にある人間行動や社会的要因まで理解しているかが問われる。

また、「日本企業が失敗を活かせないのはなぜか」といった問いでは、現状に対する批判的思考力と、建設的な解決策を考案する能力が求められる。「認知症の現状と取り組み」などのテーマも、課題を正確に捉えたうえで、現実的な改善策を提案できるかがポイントになる。

倫理観に関しても重視されている。人種差別、喫煙者の就職差別、安楽死、美容整形といったテーマは、受験生の人間性や価値観を測るために用いられていると考えられる。医師として患者や社会にどう向き合うか、その姿勢を問われている。

面接では、「目上の人との話し方」や「日米の医療現場の違い」などが問われることもある。これは、医療現場で求められるコミュニケーション能力や異文化理解への感度を見極める意図がある。医療は多様な背景を持つ人々と関わる職業であり、柔軟かつ丁寧な対応力が不可欠であるからだ。

さらに、科学的知見と社会的文脈の接続力も評価対象となる。細菌の自然発生説を否定した実験や、基準値の意味について解説する文献が出典に用いられることもあり、知識の有無よりも、それをどう社会と結びつけて考えるかが問われている。たとえば、iPS細胞研究の制度設計や倫理問題に関する出題もあり、科学技術と社会の関係を読み解く力が求められる。

こうした傾向から見て取れるのは、金沢医科大学が求めているのは、単なる学力ではなく、広い視野と深い思索、倫理観、そして他者と建設的に議論できる姿勢である。

日頃から社会の動きに関心を持ち、ニュースや本に触れ、自分なりの視点で問いを持ち続けることが、この大学の入試対策としては重要になるだろう。