子どもが輝くために〜自発性、多様性、そして強みを育む教育

「子どもには、どんな大人になってほしい?」

この問いは、全ての親が一度は抱く普遍的な悩みではないでしょうか。

現代社会は、多様化し、変化のスピードもかつてないほど速くなっています。そんな時代を生き抜くためには、知識を詰め込むだけの教育ではなく、自ら考え、行動し、そして変化に対応できる力が不可欠です。

自ら考え、行動し、そして変化に対応できる力が身につかないと、具体的にどのようなことが起こりうるのか、いくつかの例を挙げてみましょう。

変化に対応できず、社会から取り残される可能性があります。
創造性が乏しい人間に育ってしまう可能性があるため、そうなると与えられた情報や指示に従うだけで、自ら新しいアイデアを生み出せない人間になってしまう可能性もあります。
また、自ら目標を設定し、行動を起こすことができず、常に周りの意見に左右される人間になってしまいます。

だからこそ、近年、教育現場では、「子どもに主体的な学びを」という声がますます高まっています。これは、子どもが自ら課題を見つけ、解決策を考え、そして行動に移す力を育むということです。

従来の教育では、教師が一方的に知識を教え込む「詰め込み式」が主流でした。しかし、この方法では、子どもは「教えられる」ことを待つだけの受動的な存在になりがちです。

受動的な存在に陥ってしまった典型例をちょっと挙げてみましょう。

太郎くんは、小学校から中学校まで、いわゆる「優等生」でした。先生の話はいつもノートに丁寧にまとめ、テストではいつも高得点を取っていました。しかし、高校に入学して、急に成績が伸び悩んだのです。

「どうしてこんなにも勉強がつまらないんだろう?」

太郎くんは、膨大な量の宿題に追われ、興味のない教科書の内容を暗記することに疲れていました。学校の成績は、彼の自己肯定感を大きく左右するようになり、勉強に対する意欲はどんどん失われていきました。大学受験にも失敗してしまいました。

自発性が育まれなかった例ですね。

では、自発性を育むためには?

子どもが興味を持ったことを自由に探究できる環境を整えることが大切です。
例えば、好きなことをテーマに自由研究をさせたり、読書の時間を取り入れたり、様々な体験学習の機会を提供したりすることも有効です。

また、多様性、つまり様々な経験から生まれる個性を育むことも大切です。

子どもは皆、生まれながらにして異なる個性を持っています。その個性を伸ばすためには、多様な経験を積ませるのです。

例えば、様々なスポーツや芸術に触れさせたり、ボランティア活動に参加させたり、異文化に触れる機会を与えたりすることも考えられます。

これらの経験を通して、子どもは自分の得意なことや興味のあることを見つけ、自己肯定感を高めることができます。また、多様な価値観に触れることで、広い視野と柔軟な思考を身につけることも期待できます。

それぞれの個性、強みを活かす方向に誘導することも大事ですね。

誰もが、生まれながらにして持っている「強み」があります。この強みを活かすことは、子どもが自信を持って生きていく上で非常に重要です。

子どもの強みを見つけるためには、普段の子どもの様子をよく観察したり、様々なことに挑戦させてみたりすることが大切です。そして、その強みを伸ばせるような環境や機会を提供してあげる必要があります。

従来の教育観からの脱却という思考パターンも必要かもしれません。

従来の教育観では、子どもは「大人になるための準備期間」を過ごしていると考えられていました。しかし、現代社会では、子どもも一人の人間として尊重され、その個性や能力を最大限に引き出すことが求められています。

新しい教育観では、「子ども中心」の視点が重視されます。子どもが主体的に学び、成長できるような環境を整え、その過程を尊重することが大切です。

では、子どもを育むパートナーとしての親の役割は?

親は、子どもにとって最も身近な存在であり、教育において重要な役割を担っています。
親の役割は、子どもに知識を教えることだけではなく、子どもが自ら学ぶ力を育むサポートをすることです。

共感することがとても重要です。子どもの気持ちを理解し、共感することで、子どもは安心して自己表現できるようになります。
そして、励ます。子どもの挑戦を応援し、励ますことで、子どもは自信を持って行動できるようになります。

見守るという姿勢も重要ですね。子どもが自ら考え、行動できるように、適切な距離感で見守ることが大切です。特に、ドイツや北欧での「森のようちえん」の教育は、子どもの発想を重要視し、大人の役割は子どもを「見守る」ことに重点が置かれています。これにより、子どもは大人の目を気にせず、大人の価値観、大人が喜ぶことをしなければならないというバイアスがかからず、自由にのびのびと発育していくことができるのです。

もちろん、子どもを育てることは、決して簡単なことではありません。しかし、子どもが自ら考え、行動し、そして幸せに生きていくために、私たち大人はできる限りのことをしてあげたいものです。

自発性・多様性・強みを育む教育は、子どもたちの未来を明るく照らす光となるでしょう。