人はなぜ緊張するのか
試験本番で緊張してしまい、いつもどおりの実力を発揮することができなかったという受験生は、おそらく過去までさかのぼればそれこそ星の数こそいることでしょう。
時には、過度な両親や教師からの期待を一身に背負いこみ過ぎたがために、試験時間の大半は目の前が真っ暗になってしまい(いわゆるブラックアウト)試験どころではなくなったという受験生もいます(特に女性に多いような気がします)。
では、人はなぜ試験の時に緊張してしまうのでしょうか。
それは、脳の生物学的な反応によるものです。
緊張は、脳がストレスを受けたときに発生する反応です。
脳が脅威を感じると、自動的に「戦うか逃げるか」の反応を引き起こします。
この反応には、交感神経系が関与しており、血圧、心拍数、呼吸数が上がります。これらの反応により、脳や身体に酸素や栄養素が十分に供給され、一時的には高いパフォーマンスを発揮することができます。
しかし、試験のようなストレスの多い状況では、この反応が過剰になり、脳や身体に負担がかかってしまいます。過度な緊張は、脳の前頭前野という領域にある思考・判断・記憶を司る部分を妨げ、集中力や判断力、記憶力の低下につながります。また、緊張が高まると、ストレスホルモンであるコルチゾールが分泌され、ストレスによる負荷が長期化すると、精神的な症状や身体的な症状を引き起こすことがあるのです。
手や足が震えるのはなぜ?
中には緊張しすぎて手や足が震えてくる人もいます。
それはなぜかというと、緊張すると、身体の自律神経系が反応して、心拍数や呼吸などの身体機能が変化するからです。
この反応によって、交感神経系が活性化し、副交感神経系が抑制されます。このバランスの変化によって、手や足などの筋肉が緊張し、結果的に震えることになるのです。
交感神経系は、身体を興奮状態にし、血圧や心拍数を上げ、筋肉を収縮させます。また、副交感神経系は、身体をリラックスさせ、心拍数や血圧を下げ、筋肉を緩めます。緊張すると、交感神経系が優位になり、副交感神経系が抑制されるため、筋肉が緊張し、人によっては震えにいたることがあるのです。
また、緊張すると、身体の血流が増えるため、手足の末梢部分に血液が集中します。これにより、手足が冷たくなり、震えることがあります。このような緊張反応は、個人差があるため、人によって震え方や感じ方が異なることもあります。
緊張はコントロールできるのか?
原理は分かった。
では、その緊張はコントロールできるものなのでしょうか?
当然のことながら、緊張を完全になくすことはできませんが、ある程度コントロールすることはできるようです。
緊張は、脳と身体の生物学的反応の一つであり、緊張状態が続くと、ストレスや不安などの悪影響をもたらすことがあります。しかし、リラックスする方法を学び、練習することで、緊張を軽減することができます。
リラックスする方法としては、深呼吸、ストレッチ、瞑想、ヨガ、運動、音楽を聴くなどが有効です。これらの方法は、脳や身体にリラックス信号を送り、緊張を軽減することができます。また、試験前には十分な睡眠をとり、健康的な食事を心がけることも重要です。
さらに、ポジティブな自己暗示をすることも有効です。自分自身に「自分にはできる」「最善を尽くしたら後は結果が出るだけだ」と言い聞かせることで、自信を持って緊張を克服することができます。
緊張は、自分自身のストレスや緊張をコントロールすることができるため、コントロールすることができます。しかし、完全になくすことはできませんので、ストレスや緊張を感じた時には、自分自身を許容し、リラックスする方法を取り入れることが重要です。
自分より緊張している人を見ればよい?
よく、船酔いを止めるには、自分より船酔いしている人を見ればよいといわれています。それと同様に自分より緊張している人を見れば緊張が和らぐという話は本当なのでしょうか?
船酔いを防ぐために、自分よりも酔っている人を見るという方法は、一般的には効果的な方法ではありません。なぜなら、そのような状況を見たことで、むしろ自分自身の船酔いを悪化させる可能性があるからです。
同様に、緊張を和らげるために、自分よりも緊張している人を見ることが効果的であるという主張についても、科学的な根拠はありません。緊張を和らげるためには、むしろリラックスした状態を作ることが必要です。
ただし、人によっては、緊張している他の人と話したり、緊張している人と一緒にいることで、自分自身の緊張が軽減される場合があります。これは、他人との交流によって安心感や支援を得ることができ、緊張を和らげることができるためです。もちろん個人差はありますが。
緊張しない方法5選
では、緊張しない方法を5つ挙げていきましょう。
深呼吸する
ゆっくりと静かに呼吸することで、細かな血管が広がり、体の隅々まで酸素を行き渡らせることができるそうです。手のひらがぽかぽかと暖かくなってきたら緊張がほぐれた証拠。普段使わない筋肉をストレッチする効果もあるそうなので、試してみてはいかがでしょうか?
トイレに行く
緊張している時は、トイレが近くなりがち。最近では、本を読んだり音楽を聴いたりするなど、トイレをリラックス空間として利用する人も増えてきているとか。
開き直る
ここがだめでも、次がある!くらいの開き直りは必要です。
飲み物を飲む
暖かい飲み物を飲めば、気持ちも落ち着くのでは。ホットひとときコーヒータイム。
人と話す
仲のいい友達と話せば、緊張も和らぐのでは。ただ、周りへ迷惑がかからないようにしましょう。
ほかにもこのような方法もあります。
⇒ストレッチ、筋トレをする
⇒軽く運動する
⇒笑う
⇒自己暗示にかける
⇒身だしなみを整える
⇒アロマテラピー
⇒甘いものを摂る
⇒歩く
⇒瞑想する
⇒手のひらに『人』と3回書いて呑む
⇒本・雑誌を読む
⇒顔を冷水につける
⇒緊張に効くツボを押す
⇒自分なりのおまじないをする
⇒愛用しているものを手でにぎる
といった感じです。
男女別の傾向としては、男性は硬くなった体を運動で解きほぐそうという方法が多く、女性は人とコミュニケーションをとることで張りつめた気持ちを和らげようという人が多いようですね。
本番に強くなる方法
最後に、ずいぶん前ですが、『NIKKEI BP NET』にも方法が掲載されていたので、その一部を引用してみましょう。
脳医学、生理学に基づいた「本番に強くなる方法」です。
緊張緩和策
~本番前に深呼吸をする~
自律神経が支配する体の機能のうち、呼吸は、唯一自分の意思でコントロールできる。
呼吸を落ち着かせると、副交感神経が優位になりリラックスできる。
姿勢を正す、体を動かす緊張していることばかり考えていると、
過去の記憶を呼び出してしまう。別のことに関心をそらせば緩和される。
事前の準備術
~イメージトレーニングを取り入れる~
人の行動を見ると、脳の「つもり細胞(鏡細胞)」が活動する。
上手な人を見て「つもり細胞」を働かせると自分も上達する。
朝起きたら光を浴びる
肉の一成分であるトリプトファンは、光の刺激で精神安定ホルモンのセロトニンになる。また熟眠ホルモンのメラトニン生成にも光が欠かせない。
まとめ
いかがでしたか?
緊張を和らげ、自分をリラックスさせる方法は人それぞれですが、なにより本番では平常心で望むことが大事!
試験本番での緊張を少しでも和らげるために、今からでも少しずつ上記方法を実践し、自分にもっとも適した方法を見つけましょう。