心理的安全性が欧米に比べて低い日本の職場と教育現場

心理的安全性とは?

心理的安全性とは何でしょうか?

簡単に言って仕舞えば、組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態のことを指します。

これはハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授が提唱した概念で、以下のように定義されています。

「チームの他のメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰したりしないと確信できる状態」

心理的安全性のメリット

心理的安全性が高まると、以下のようなメリットがあります。

・メンバーの創造性や生産性が向上する
・コミュニケーションが活発になり、問題解決がしやすくなる
・ミスの報告がしやすくなり、組織の学習が促進される

心理的安全性を高めるには?

心理的安全性は、組織のパフォーマンスを向上させるために重要な要素の一つです。企業や組織においては、心理的安全性を高める取り組みを積極的に行うことが重要ですし、そのような取り組みを行う企業も最近では増えてきています。

では、心理的安全性を高めるためにはどうすれば良いでしょう?
以下のような取り組みが挙げられます。

・メンバーの意見を尊重する
・ミスを罰しない
・オープンなコミュニケーションを促進する

上記のことを実践し、心理的安全性が高まると、組織の中では以下のような変化が起こります。

・メンバーは自分の意見やアイデアを積極的に提案するようになる
・他のメンバーの意見やアイデアを受け入れ、尊重するようになる
・_チームワークが向上し、目標達成に向けて協力するようになる

つまり、心理的安全性が確保されると、組織の活性化やイノベーションの促進につながっていくわけです。

日本の組織の心理的安全性

では、日本の学校や会社などの組織においての心理的安全性はどうでしょう?

一般的に、日本の組織の心理的安全性は欧米に比べて低いと言われています。

その理由としては、以下のようなものが挙げられます。

・日本の組織は、上意下達の文化が根強く残っている。
・失敗が許されないというプレッシャーが強い。
・協調性が重視され、個の意見を尊重する文化が根付いていない。

欧米の組織の心理的安全性

一方で欧米の組織はどうでしょう?

欧米の組織は上司や先輩に対しても自分の意見を自由に発言できる風土がありますし、失敗を学びの機会と捉え、積極的に挑戦する文化が根付いています。

そのため、欧米の組織では、日本の組織に比べて心理的安全性が高く、メンバーの創造性や生産性、チームワークが向上していると言われています。

もっとも近年では、日本の組織でも心理的安全性の重要性が認識され、その向上に向けた取り組みが進められています。しかし、まだまだ欧米に追い付いているとは言えません。

日本の組織で心理的安全性を高めるには?

欧米に遅れをとっている日本ですが、具体的にはどのようにすれば心理的安全性が高まる環境になっていくのでしょうか?

以下のことが考えられます。

・ミスを罰しない文化の醸成
・オープンなコミュニケーションの促進
・リーダーシップ教育の充実

これらの取り組みを継続的に進めることで、日本の組織の心理的安全性が向上し、組織のパフォーマンスが向上するのではないかといわれていますが、新しい企業はともかく、「老害」と揶揄されるような年寄りで頭の硬い人たちの多い昔ながらの企業にはなかなか難しいことなのかもしれませんね。

時代ごとの心理的安全性の変化

とはいえ、日本も時代が進に連れて、特に学校教育においては、少しずつ良い方向に改善はされてきています。

明治、昭和、平成、令和と時代が移り変わる中、日本の学校教育現場における心理的安全性は、大きく変化してきたと言っても良いのではないでしょうか。

時代ごとに順を追って見てみましょう。

明治、大正時代

明治、大正時代は、近代教育の導入期であり、学校教育は、明治政府による国民統合と近代化の推進を目的としていました。そのため、学校教育現場では、教師による絶対的な権威と、生徒による服従が重視されました。このような環境では、生徒は、自分の考えや意見を自由に述べることは難しく、心理的安全性は低かったと考えられます。

昭和時代

昭和時代に入ると、学校教育は、民主主義教育の理念に基づくものに徐々に変化していきました。そのため、学校教育現場では、生徒の主体性や協働性を育むことが重視されるようになりました。このような環境では、生徒は、ある程度自分の考えや意見を自由に述べることができるようになったと考えられます。
しかし、いじめや差別など、生徒同士の人間関係によるストレスは、依然として大きな問題となっていました。

平成時代

平成時代に入ると、学校教育は、生徒の個性を尊重し、多様性を育むことが重視されるようになりました。そのため、学校教育現場では、生徒の多様な考えや意見を認める風土が徐々に醸成されるようになりました。また、いじめや差別などの問題を解決するために、学校や地域社会による取り組みが進められるようになりました。
このような環境では、生徒の心理的安全性は、徐々に向上したと考えられますが、いまだに課題は残っているといえるでしょう。

令和時代

令和時代に入ると、学校教育は、主体的・対話的で深い学びを実現することを目指しています。そのため、学校教育現場では、生徒が自分の考えや意見を自由に述べ、他の生徒や教師と対話しながら学ぶことができる環境づくりが求められています。このような環境では、生徒の心理的安全性は、さらに向上することが期待されています。

教育現場の変化

学校、教育現場の心理的安全性ですが、具体的には、以下の点が改善されてきたと考えられます。

・教師の権威主義的な指導が減り、生徒の主体性や自主性が重視されるようになった。
・生徒の多様な考えや意見を認める風土が醸成されるようになった。
・いじめや差別などの問題を解決するための取り組みが進められるようになった。

しかし、依然として以下の課題が残っています。

・教師の心理的安全性が低く、生徒の心理的安全性を十分に確保できていない。
・いじめや差別などの問題が依然として根強く残っている。

今後、学校教育現場における心理的安全性をさらに向上させるためには、教師の心理的安全性を高める取り組みや、いじめや差別などの問題を解決するための取り組みをさらに進めていく必要があるでしょう。

特に日本人は排他意識が強く、「皆平等」という考えがエスカレートし、「周囲と自分は同じでなければならない」といわゆる村社会的な考え方が未だ根強く残る地域(特に地方)が少なくなく、「人は人、自分は自分」となかなか思えない人が多いことも確か。

もしかしたら、100年経っても変わらない地域は変わらないままなのかもしれませんね。