医学部入試 地域枠

地域枠ってなに?

最近は、日本の大学の医学部の多くは「地域枠」受験を設けています。

「地域枠」とは、日本の大学入試において、特定の地域の出身者に対して割り当てられる枠のことを指します。医学部においては地域枠が設定されることが多く、出身地の地方自治体に属する受験生に優遇措置が取られます。

地域枠の目的は、地方における医療・健康支援の充実を図ることにあります。地方には都市部に比べて医師不足が深刻であるため、地方出身者による医療・健康支援の現場での活躍を促すことが期待されています。

地域枠は、出身地の地方自治体や、その周辺地域を対象として設定されることが一般的です。地域枠に応募する場合は、出身地の自治体が発行する証明書が必要となる場合があります。

また、もし地域枠で合格した場合は、将来医療従事者となった際は、そのエリアで(たとえば、新潟大学だったら新潟で)8年や10年など、大学によっても期間の差はありますが、医療活動に従事しなければなりません。

そして、地域枠で受験する場合、多くの大学では、地域枠のための志望理由の提出を要求してきます。

以下、過去に私が指導して、実際に合格した「地域枠受験」用の志望理由書を特別スペシャル大サービスでお見せしましょう。

金沢医科大学医学部の場合

 私は将来、地元石川県の地域医療に貢献したいと考えている。そして、地域の方々、スタッフの方々から信頼され、患者さんには親身に寄り添い安心を与えられる医師になりたい。決して独善には陥らず患者さん中心の医療を行い、その中で信頼関係を築き、患者さんのQOL向上につとめていくことを生きがいにしたいと考えている。そのように考えるようになった理由は2つある。1つめは、父親の存在である。父は診療内科の医師して、認知症の患者さんに寄り添い診療している姿を幼い頃から見ていたため、人の健康の下支えに貢献する父のような存在になりたいと憧れを抱いていた。
 もう一つは、地域医療の重要さを高校の時の自由研究で日本の現在の医療状況を調べてみると、医師不足の問題が深刻な地域が多いという現状を知ったことである。特に私が生まれ育った石川県には、医師不足で苦しんでいる地域が数多くあることを知り、地域医療の大切さを真剣に考えるようになった。住民の健康を守るために地域に出向き、住民に寄り添い、より住民のニーズに応えることができるようにしていくことの重要性を肌で感じた。
 実際、母の地元である奥能登でも、この問題は深刻化しているそうで、診察の待ち時間が長くかかることも珍しいことではない。このような状況を知るにつれ私は地域医療に興味を抱くようになった。また、能登の地域だけではなく、日本全国いたるところで医師不足に悩む地域が多いことを知り、地域医療の必要性を顕著に感じた。もちろん医師として地域の患者さんに寄り添うことも大切な仕事である。しかし医師不足の現状から、一歩進んで私自身が総合診療医となり、直接患者さんと触れ合い、診察し、地域の住民の方々の健康の下支えをしたいという思いが日に日に強くなり、私は医師の少ない地域に根差した医師になる決意を固めた。

 その中で私が貴学への入学を熱望するのは、「病だけではなく、病を患う人をみる」ことが出来る医師を育成するポリシーに魅せられたからである。他大学よりも徹底した「倫理に徹した豊かな人間性」を基盤とした教育方針の下、医師として患者さん一人一人に思いやりを持って接し、高度な技術と知識をとともに、医師としての人格を育み、高い知識や技術で目指すべき医師像に近づけると考えた。また、「倫理に徹した豊かな人間性」を基盤とし、生命への畏敬から生まれる利他的な行動をとれる医師を育成されるポリシーに魅せられたからである。医師として患者さん一人ひとりに思いやりを持って接し、高度な技術と知識を持つことが必要であると考える私にとって、貴学のポリシーの下、医師としての人格を育み、高い知識や技術で目指すべき医師像に近づけると考えた。在学中の勉学目標としては、まず1年次には、総合人間科学で様々な分野を学ぶことで多様な価値観を理解するとともに、早期臨床体験実習では早い段階から医療の現場を体験することで現場での役割を理解したいと考えている。2年次には解剖学に特に力を入れて取り組みたい。最高水準の実習環境を備えた貴学の「アナトミーセンター」での実習を通して、命や生きるということをより深く学ぶつもりでいる。また、3・4年次には高齢医学、診療の基本に力を入れて学びたいと考えている。さまざまな症例に取り組むことで、患者さんにとって最善の治療を提供するスキルを身につけたい。5年次以降はスチューデント・ドクターとして医療チームの一員となり、臨床に必要な力を養っていくつもりである。また、能登北部地域医療研究所には他大学にはない魅力を感じている。訪問診療や、へき地巡回診療を体験し、地域医療の根本を学びたい。
 私は心身ともに健康であることや、思いやりの心は医師には不可欠であると考えており、その点において私は患者さんと親身に向き合う医師に向いていると考えている。また、看護実習で育んできたコミュニケーション力を活かして患者さんのQOL向上に貢献したい。もちろん卒業後の5年間、もしくはそれ以上の期間は貴学の大学病院にて地域医療に専念し石川県を第二の故郷と呼べるほど、地元に根付いた医療に専念するつもりである。
 もし貴学への入学が許されれば、将来の目標を実現させるために誰よりも熱心に勉学、研修に励むつもりである。以上の理由から貴学への入学を熱望する。

まとめ

いかがでしたか?
上記のように、地域に貢献したいという熱い想いを、その気持ちだけではなく、様々な角度から書いていく必要があります。

このような内容、テイストのものを書けば、地域に貢献したいのだなと大学は判断してくれ、良い印象を植え付けられると同時に、合格に近づくことが出来ます。

中には、地域枠を利用してまずは大学に合格。合格し、国家試験を取得した後は、規定の年月を地元で医療活動に奉仕し、期限が過ぎたら別な場所(都市部など)で医療活動をしようと考えている受験生もいらっしゃるかもしれません。

もちろん、人生プランはひとそれぞれ。
そのような将来設計を考えることは悪いことではありませんが、もしこのような考えを抱いているとしたら、志望理由書からは感じ取られないように書かなければいけません(当然ですが)。

ですので、地域枠受験を検討している受験生の方は、地元にどのような形で医療に貢献できるのかをじっくりと考えてみましょう。

地域によって、それぞれ抱えている事情は違いますから。
社会貢献とは、「社会の困っていることを困ってないことにする」ことでもあります。ですので、まずは地域の問題点、改善すべき問題をリサーチすることから始めるとよろしいかと思います。

そして、リサーチした過程で出てきた具体的な話やエピソードが、より具体的なリアリティを志望理由書から大学側に伝われば、合格に一歩近づくことにつながります。