人間を見たい
医学部面接で大事なことはなんでしょうか?
医学部に限らずですが、医学部以外の大学受験の面接も、就活の面接も「人間性」を見たいというのが、採用側の一番の本音でしょう。
そして、医師といえば、高度な技術と知識に加えて、人間性も非常に重要な判断要素になります。
それはそうですよね。
勉強は出来るけれども、人格に問題があったり、危ない思想の持主、問題行動を起こす面倒くさい学生は大学は欲しくないわけです。それ以上に、そのようなある意味「危険人物」を医者として世に放つわけにはいかないのです。
ですので、大学の医学部の面接は「勉強は出来るけれども人格、あるいは人間性に問題がある受験生」を間引くためのフィルターとして機能している面が強いといえましょう。
だから、医学部の面接はけっこう厳しい。
いや、圧迫面接が多いから厳しいというのではなく、他の学部の面接よりも、より細かく様々な側面から人間観察(受験生観察)がなされていると思ったほうが良いでしょう。
怖い面接官じゃなかったから助かった、良かった。面接は終始和やかなムードで終わった。だから受かっているに違いない。
そう笑顔で報告しにくる生徒にかぎって不合格であることが多いです。
そう、表面上はソフトかもしれませんが、その裏ではとても細かく受験生の一挙手一投足、立ち居振る舞いが観察されているのです。
ですので、たかが面接されど面接。心して対策しないと、せっかく積み上げてきた学力が、あと一歩で合格というところで水泡に帰してしまうことも珍しくはないのです。
面接官は紙を見ている
そこで、まず面接官の立場となって考えてみましょう。
面接官といえども、人間です。
いきなり初対面でなんの予備知識のない人間相手に、あれこれと突っ込んだ質問を次から次へと出来るわけがありません。
もちろん、事前に用意した「決まり切った質問」は投げかけることは出来るかもしれませんが、そこからはあまり深い人間性を知ることはできません。
目の前の受験生のパーソナルな情報、人間性を深堀していくためには、一般論的な質疑応答ではなく、やはりその人物の経歴やバックグラウンドを軸に掘り下げていったほうが早いのです。
そうすると、重要になるのは、紙です。そう、書類。
たとえば、調査書。
あるいは、埼玉医科大学のように、面接前に事前に受験生に記入させる「アンケート」も、受験生の内面や思考パターンを掘り下げるためには重要な参考資料となります。
せっかく埼玉医科大学の話を出したので、以前実際に配布されたアンケートの記入項目を記載してみましょう。
1,医学部志望理由
2,志望理由
3,入学後の抱負(やりたいこと)
4,高校時代(これまで)努力したこと
5,友人と接する時に気を付けていること
面接で問われる定番質問といえばそうなのですが、事前にある程度受験生の書いた内容を把握しておくことによって、より深く面接で掘り下げることが出来ます。
なぜなら、面接の段になって、はじめて「志望理由は何ですか?」と尋ねて「私の志望理由はかくかくしかじかです」と受験生が話している間の時間を省けるからです。
あらかじめ志望理由を知っておけば、たとえば「地域医療に貢献したい」というのが志望理由のひとつだとすると、いきなり面接の場で「どの地域で地域医療をしたいの?」とより具体的なことを質問することができます。
あるいは、「高校時代はサッカー部でキャプテンとして頑張り、こういうことやああいうことをやっていました」などといったことを聞いている時間をショートカットしたぶん、「サッカー部で苦労したことは何?」と、より一層その受験生のプライベートや行動様式、考え方を知ることが出来るわけです。
ですので、事前に上記5項目程度の内容はより詳細に作りこんでおく必要があります。
特に、重要なのは「入学後の抱負(やりたいこと)」ですね。
医学部を受験する生徒は、複数の大学を受験することと思います。
ということは、大学によって、カリキュラムが異なりますし、力を入れている教育や理念も違います。
ですので、しっかりと受験するそれぞれの大学のリサーチをしておき、大学別に使い分けられるようにしておくことが必須です。
「2」の「志望理由」も同様ですね。
これも、大学によって建学の精神や理念、カリキュラムが違いますから、受験する大学別に準備しておく必要があります。
もっとも、1,4,5は使い回しが効く質問項目なので、ひとつ用意すれば、複数の大学で使えます。
A大学ではサッカー部を頑張った、B大学では文化祭実行委員を頑張った、なんて使い分ける必要はありませんからね。ここは統一しても良いと思います。
学修計画も大切
「3」の「入学後の抱負(やりたいこと)」ですが、これは「学修計画(学習ではなく「修」と表記することが多いです)」を尋ねています。
だから、「やりたいこと」という言葉を額面通りに受け取って、「スポーツにも力を入れて体力作りにも励み、学問との両立をはかりたいです!」というような返答はNGです。
この大学に入学したら、どのような分野に力を入れて学び、将来はそれを医療の分野にどのように活かしていきたいのか。
このようなことを話すようにしましょう。
また、ただ「頑張ります!」「努力します!」「誰にも負けないようにしっかりと勉強して、絶対に国試(国家試験)に合格してみせます!」といったような、勢いや気合だけの言葉も言わないほうが良いです。
意気込みのみを語るなかれ
面接する大学側の人たちの多くは教授や助教授です。
最初は鼻息荒くやる気をアピールしていつつも、入学後はあまりの勉強量と課題の量と、これまで勉強してきた受験勉強との違いに面喰い、失速していった学生を何人も見ている人たちですから、「言葉だけのやる気人間」はウンザリするほど見ているはずです。
そして、「頑張ります」といった類の言葉は、誰だって簡単に言えますからね。お金を借りる人は、借りた瞬間は返そうと思っているはずですし、「必ず返します」と言いますよね? しかし、返せずに結局は踏み倒したり逃げたりする人は必ずいます(もちろんきちんと返す人もいますが)。
それと同様、受験生のやる気も「その場」では当然「やる気100%」でしょうが、入学後は次第にその意気込みが低下していくことは、面接する人は経験的に熟知しているのです。
ですので、意気込みのみを語るのではなく、ポイントは具体的かつ簡潔明瞭に入学後の学修計画を述べるようにしましょう。
その語り口から、面接官は受験生の真のやる気を判断しているのです。