ピロリ菌とは? 除菌すると?

ピロリ菌とは?

ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)は、胃の内側で生息するらせん状の細菌です。その特徴は、4~8本の細長い「しっぽ」で、これを「べん毛」と呼びます。このべん毛を使って、ピロリ菌は胃内をくるくると動き回ることができます。

通常、胃は強い酸(塩酸)を分泌しており、食物の消化や細菌の殺菌を担当しています。そのため、胃内では細菌が生き残ることは難しいと考えられていました。しかし、1983年にウォーレン博士とマーシャル博士によって、ピロリ菌が実際に生息できることが発見されました。

さらなる研究で明らかになったのは、胃潰瘍の90%以上と十二指腸潰瘍の100%近くの患者にピロリ菌感染があることです。また、2001年には上村先生らによる研究(NEJM2001)で、ピロリ菌感染がある人々の中で、胃癌の発症率が高いことも示されました(年に約0.5%の頻度で胃癌が発症する可能性があることがわかりました)。

要するに、ピロリ菌感染は胃癌や胃潰瘍、十二指腸潰瘍と深い関わりがあるということです。

ピロリ菌を除菌するメリット

ピロリ菌を除菌することで、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の再発リスクがほぼゼロになります。胃癌についても、1/3ほどの確率で発症を抑制できると言われています(2008年のLancet誌などで報告されています)。

ただし、ピロリ菌感染は基本的には幼少期に起こり、その後も一生涯にわたって感染が続くことがあります。そのため、ピロリ菌を除菌して効果を得るには、年齢や胃の状態(慢性胃炎の程度など)が影響します。30代以下で除菌すれば、ほとんどの胃癌を予防できる可能性があります。一方、70代以上や胃の状態がひどい場合は、効果は1/3程度にとどまるかもしれません。

要するに、ピロリ菌を除菌することは、胃癌や胃潰瘍、十二指腸潰瘍といった病気との関連性を考えると、非常に重要な対策と言えるでしょう。

ピロリ菌の除菌方法について

ピロリ菌を除菌するためには、抗生物質2種類と胃薬を組み合わせて1週間服用します。その後、最低4週間空けて除菌が成功したかどうかを判定し、もし菌が消滅していない場合は、別の抗生物質を服用して1週間様子を見ることもあります。1度除菌が成功すると、再発のリスクは非常に低くなり、通常はピロリ菌感染を繰り返し検査する必要はありません。

ただし、多くの胃がんは、ピロリ菌の感染による胃炎や胃の萎縮が原因とされています。ピロリ菌を除菌すると、胃がんのリスクも約3分の1まで減少しますが、完全にゼロになるわけではありません。そのため、除菌後も定期的に内視鏡検査を受けることをお勧めします。

ピロリ菌の除菌治療には、胃酸分泌を抑制する薬や抗生物質などが使用されます。また、胃の粘膜を保護する薬も必要に応じて併用されます。これらの薬を1週間服用することで、約8〜9割の患者さんが除菌に成功することが期待されています。

ピロリ菌除菌後の効果は?

ピロリ菌を除菌することで、胃がんのリスクが低くなると言われています。ただし、注意が必要です。ピロリ菌を除菌しても、胃がんのリスクは完全にゼロにはなりません。除菌は、胃潰瘍の再発を予防する効果があるとされていますが、胃がんの発症予防に関しては確固たるデータはありません。また、若い時期に除菌を行わないと、胃がん予防には効果がないというデータもあります。

現在の日本では、ピロリ菌感染率は約20%とされています。1970年代には70%以上もいました。胃がんの死亡数自体はあまり変わっていないものの、年齢調整された胃がんの死亡率は、1985年の約40%から2020年には約20%まで減少しています。これは一部、ピロリ菌除菌療法の成果が現れている可能性があります。

通常、ピロリ菌感染のない胃粘膜はきれいなピンク色です。一方、ピロリ菌感染した胃粘膜は赤く発赤し、ただれや粘液の増加が見られます。ピロリ菌感染の胃粘膜では、以下の所見があります。

襞が腫れる
広範な赤み
粘液の増加
腸の上皮が生じる
胃粘膜が萎縮する
ピロリ菌を除菌すると、襞腫大と広範な発赤の所見は消失しますが、胃粘膜の萎縮と腸の上皮化生は残る可能性が高いです。これらは、ピロリ除菌後の胃がんのリスク要因とされています。したがって、ピロリ除菌後でも、胃粘膜萎縮や腸上皮化生が見られる場合は注意が必要です。

影響を受けやすい食べ物と避けるべき食べ物

ピロリ菌の影響を減少させるために、感染を防ぐだけでなく、胃の健康状態を守る食生活を心がけることが大切です。特に、食事に関しては、塩分の摂りすぎに注意が必要です。塩分が多い食べ物は、胃の状態を悪化させる可能性があると言われています。

塩分を控えめにする工夫が必要
塩分の多い食事は、胃の内側を保護する粘液を減少させ、ピロリ菌による胃への影響を大きくします。塩分の多く含まれる食品としては、カップ麺やインスタントラーメン、梅干しなどがあります。

健康な食事の塩分摂取目標は、男性で一日に7.5g未満、女性で6.5g未満です。しかし、カップ麺を丸ごと食べると、1食あたりに4.0~7.0gもの塩分が含まれています。カップ麺を食べる場合は、スープをできるだけ摂り過ぎないように気をつけましょう。

塩分過多を避けるために
塩分を過剰に摂らないために、次のポイントに気をつけましょう。

・カップ麺のスープは全部飲まないようにする
・低塩食品を選ぶ
・香辛料やレモンなどを使って調味料の使用量を減らす
・味噌汁は具を多めに入れてスープの量を減らす
・昆布やかつお節などの出汁を活用する
・ソースやケチャップなどは控えめに使う
・弁当についてくるソースは全量を使わない